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2024.07.08 スキーで世界をめぐる”カナダ・ウィスラー編”
皆さんこんにちは。
アルマダ・ジャパン アンバサダー&ガイド 旅するスキーヤーTKYこと河口タカヤです。
私は日本のスキーシーンが落ち着いたこの春、7カ国をスキーをしながら巡りました。
その中で思い入れの強かった、カナダ編とアイスランド編をレポートをするエッセイを二回に分けてお送りいたします。
今月はカナダ編を綴ります。
カナダとの縁
カナダは私と同世代以上のフリースキーヤーなら、一度は憧れたであろう世界的リゾート「ウィスラー」を擁する自然大国。私も多分に漏れずカナダという国とウィスラーというリゾートに憧れ、大学を休学してまで足がけ2シーズン住み込みました。私にとってウィスラーは、海外の感覚を知り、世界の滑りを目の当たりにし、旅を覚えた、いわばルーツのひとつ。帰国した後にも足繁く訪れてはいるものの、コロナ以降は初めての訪問。今回のトリップは私が普段BCメインガイドを務める、野沢温泉 コンパスハウス 主催のウィスラーツアー。必然的に胸が高まります。
スキーのために存在する山岳リゾート「ウィスラー」
バンクーバー空港に降り立つと、針葉樹の芽吹く独特の香り。嗅覚が、まだ未熟すぎて不安だらけだった20歳の頃の記憶を思い出させます。空港から出ると、初夏のカナダらしい乾いた青い空と青白い山脈が出迎えてくれました。
そして日本のフリースキーシーンを長年牽引してきたアルマダ・ジャパンのレジェンド「上野雄大」と合流と合流し、一路世界最大級の山岳リゾートへ。かつてカナダで海外の感覚を学んで以来すっかり旅に魅せられた私は、これまでに50を超える国と地域への旅の機会に恵まれました。それでもウィスラーほどのリゾートは、片手で数えるほどしか存在しませんでした。
中でも、雪質、滑走規模、ロケーション、リゾートとしてのインフラ、交通アクセスなど、全てにおいてウィスラーはトップクラスで、バランスに優れたリゾート。夏には、既にスノーシーンを凌ぐビジネスとなったマウンテンバイクの聖地となり、オールシーズンリゾートとして完成。ウィスラーはブームを通り越して、もはや一つの経済特区にまで昇華したといえます。
そして相変わらずとんでもないレベルの若いスキーヤーが続々と誕生してくるスキーの聖地。FWQ Hakubaで優勝経験を持つアルマダ・ジャパンのフリーライドライダー「後藤悠子」もウィスラーにてトレーニング中です。ブレイクスルーを夢見て、多くの若いスキーヤー達が足繁くこの地に通い続けています。
スキーの選択
そんなウィスラーというスキーリゾート、コース数はゆうに200を数え、滑走可能面積は、国内でも屈指の規模を誇る野沢温泉スキー場の実に11倍にまでおよびます。広いだけではなくコース一本一本がとにかく長く、しかも地形がワイルド。ずいぶん長く滑り足がパンパンと自覚する頃、ようやくたったリフト一本分の滑走距離であったことに気づきます。そのコース、もとい山塊を滑るべく、2025季から登場するスキー2機を日本から携行しました。
ARV112
長きにわたってアルマダの象徴であるARVシリーズ。
そのラインナップに新しく登場したモデルです。
近年アルマダは、センター幅112mmを多用しております。
どうもあらゆるコンディションでマルチに使えるらしいマジックナンバー112mm。
Short Pants ParadoxやLocator112で個人的に既にトライしておりますが、なるほど、パウダーランからオンピステでのカービングまで、バランスの良いセンター幅です。
ウィスラーの山頂は標高2200mを超え、上部は初夏でも締まった雪。
ボトムまで標高差1600mを一気に滑りおりれば、麓は半袖でも平気な気温となり春のザラメ雪。締まった雪ではしっかりとした大きな弧でのカービングを楽しみ、ザラメでは足元を掬われることもなくラクにザブザブ雪を走破。このマシンを履くことで、張りと適度な重みのあるARVらしい芯材が、安定感とリバウンドを与えてくれて、ウィスラーのあらゆる雪質をカバーしてくれました。
付け加えると、厳冬期の日本のパウダーでもテストしましたが、このセンター幅があればもちろんフカフカの雪でも自由自在。名機としてロングセラーを続けるARVJJUL(センター幅116mm)と比べると、浮力においてマイナス要素を感じることがないうえに、ロッカーが浅くて有効エッジが長く、ノーズからエッジがより入りやすいため、操作感がマニュアルでしっかり雪を捉えます。しかも浅いロッカーは、パウダーとの抵抗が限りなく少なく、減速しないという印象です。
JJULがパウダーでのオートマチックなピボットターンとポップが得意だとしたら、ARV112はあらゆる雪質で、カービングとスピーディーな滑りが得意と思わせてくれます。ARVシリーズの中では際立って硬派な印象のマシンでした。
(日本のデモスキーでいう「あらゆる雪質でのカービング」より広義)
ARV106
同じくコチラの新登場のマシンも持参しました。カタログ表記のスペック上はARV112とサイズ違いという印象のスキーであり、用途や感触は似ていますが、センター幅が6mm細い点以上に、ロッカー形状の違いで乗り味が大きく異なっています。有効エッジ は思いのほか足元の近い位置に限定されており、センターが細めなこともあって、ARV112 とは対照的で動きやすさが際立ち、直感的に動かせるマシンです。フリーライドではカービングからテールをズラすドライブターンまで、変幻自在にターン弧を作ることが可能です。
さらにパークでも遊びましたが、エッジの余計な引っ掛かりもなく、それでいて瞬時のエッジコントロールもしやすく、より広い意味でのマルチなスキー(ジャンルレス)という印象でした。センター位置も真ん中に近い分、スイングウェイトは軽く感じます。バター系の動きもしやすく、もっと「アルマダらしく」遊ぶのであればこの板だろうな、というフリースタイルなスキーでした。
アルマダというブランド
北米で発祥したアルマダスキー。
創業当時にトップを走っていたライダーが集まって起こした夢のブランドであり、その実力とカウンターカルチャー全開なプロモーションで話題を独占しておりましたが、それも落ち着き、カナダでは多くのキッズに支持される定番のブランドとなっておりました。
そんな歴史を経て、私がアルマダというスキーブランドに思うこと。
それは、当時から今まで、本気でユーザーのための物作りをしているということ。
ビジネス的な利益の大きさを優先するあまり、契約選手だけに優れた板を用意し、キッズのスキーは蔑ろというブランドもあるなか、アルマダは過去から一貫してユーザーにもキッズにも責任を持ったスキーを作っております。そしてその基本に加えて、デザイン面、機能面、どちらも必ず遊びをクリエイトしてくること。乗り込んで乗り込んで、ようやく馴染むといった修行のようなモデルは存在せず、いきなり遊べるファンなモデルばかりです。なのにエキスパートでも乗りごたえ充分なスキーばかりなので、本当に優れた製品ばかりです。エキスパートやプロに憧れるキッズが一緒の板に乗れる。これはシンプルですが夢を紡ぐことでありスキー文化の発展において重要な要素です。
さらにアルマダは、環境、労働、消費者の観点から持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証である「ブルーサイン認識」も受けており、スキーヤーだけではなく、生産者や私たちが遊ぶ地球にも優しいプロダクトばかりが揃っております。気候変動の危機が叫ばれるなか、いちスキーブランドとして、いちスキーヤーとして、私たちはスキー文化の発展に責任を持たなければなりません。
また、雪の上で存在感を発揮するデザインだけではなく、その地道な取り組みにも注目です、アルマダの様な、目先の利益だけに捉われない、真にスキーを愛するブランドが増えることを切に願います。
次回はアイスランドBC編について書き綴ってまいりたいと思います。
次回の配信もお楽しみに!!