2025.07.25 スノートリップの価値を考察しよう。

プロトラベラーとして活動する、旅するスキーヤーTKより。
暑すぎる夏に、これまた熱苦しい旅の話。

・スキーの多様化

あらゆる価値観が多様化する時代。
スキーシーンにおいてもそれは例外ではなさそうです。

How Toに従って皆が同じゴールを目指していたかつてとは違い、いまはあらゆるスキースタイルが楽しまれるようになりました。それに伴って当初はパーク用ツインチップスキーばかりだったARMADAも、年を追うごとにスキーのラインナップが拡充してきました。

現代では、コンディションや目的地、滑るメンツとフィールドによってスキーを選ぶという、サーフカルチャーのような遊び方が定着。さらにアルペンやフリーライドというようなラベリングされたジャンルにとどまらず、そもそもアスリートとして、もしくはフィットネスとして、あるいはライフスタイルとして。スキーカルチャーの成熟により、スキーへの取り組み方でさえあらゆる価値観が認められる時代に突入した感があります。

ARMADAは、滑り手発祥のフリースタイルスキーブランドよろしく、ローンチから23年に渡って、他ブランドよりも特に自由な発想で新たなスキーの価値観を創造してくれました。かく言う私は、大学生時代に没頭したパークライドを経てフリーライドへ。特に目覚ましい成績を出せなかったコンペを諦めても、スキーは大好きで諦めきれず、雪山全体を遊ぶスタイルに傾倒し、ついにはバックカントリーガイドを目指しました。同時に大好きだったバックパッカーローカル旅との掛け合わせで、今ではスノートリップに価値を見出し、ARMADA SKIと共に50を越える国や地域への旅を果たしています。
ではその魅力と価値について考察してみましょう。

スノートリップの価値とは

スキーには、技術の向上や成績といったスポーツとしての価値観はもちろんですが、ただのスポーツの枠に収まらない魅力があると信じています。
雪山のロケーションや天候は、トラックスポーツや体育館スポーツと違い、各地で千差万別。
スキーというアクティビティをきっかけとして各地を旅し、その違いを遊ぶこと。
それが最高に楽しいのです。
上手い下手だけではない、誰とどこを滑るか。
そのことに価値があるのです。

ちなみに私なりのバックカントリースキーの価値観は、景色の良いロケーションを探し滑ることです。
安全の担保は大前提としつつ、バックカントリースキーは積雪と傾斜さえあればどこでも遊び場になります。時には海の目の前のフィヨルドの崖や、ヨーロッパらしい石畳の街を望むただの丘、雪に包まれた静かな棚田の風景、そして急峻で大きな山塊まで。
その観点でフィールドを俯瞰すれば、日本全国もとい世界各地まで、目的地は星の数。
無限にある目的地から、天気図と地形図を片手により良い雪と地形を追いかけます。
そう、バックカントリースキーと旅は特に相性がいいのです。

もちろんオフスノーの時には、観光さらには文化体験や地元の民族との出会い、その地の料理を楽しむといったバックパッカーの基本は欠かしません。
つまりスノートリップは、スキーを手段として旅することで、観光旅行の300倍深みが増す最強の遊びと心得ています。
以下で昨シーズンの私の旅を紹介させてください。

・厳冬期の旅 野沢温泉

厳冬期を中心に、シーズンの半分はホームである野沢温泉とその周辺エリアを旅しています。
野沢の積雪量と積雪頻度は言わずと知れた好条件ですが、特筆すべきはその雪質。
海から絶妙な距離に位置しつつ標高も高いため、厳冬期には北海道と見違うほどのクリーミーな良い雪が降ります。
そして世界でも植生が限られるブナの豊かな森は野沢の代名詞であり、その美しい森で最高の雪のツリーランを満喫した後は村内に13ヶ所点在する温泉で癒される。
野沢の旅は、情緒に溢れた唯一無二の経験です。

・2月の旅 北海道

インバウンドに特に注目されている北海道は、今や世界中のスキーヤーにとっての聖地。
奇跡のように雪が降り続く日本にあって、一番北に位置する北海道は、世界でも有数のロケーション。
私たちスキーヤーにとってなくてはならない場所です。
押し寄せるインバウンドスキーヤーたちを振り切り、昔から大切にしている場所にそっと歩み出せば、素晴らしい景色と雪が迎えてくれます。
もちろん豊かな食も忘れてはいけません。

・3月の旅 アイスランド

カナダでのスキー修行中、衝動に駆られ訪ねた-35℃のユーコン&アラスカで、オーロラや極夜といった全く異なる自然環境を目の当たりにし、北極圏に通うようになりました。
そして2016年に念願だったヨーロッパ北極圏を訪ね、ヨーロッパ最北端であるノルウェー北部のノールカップ岬で白夜のなか北極海に向かってスキーをしたことから、北米北極圏とはまた違う洗練された集落と大自然に心を奪われ、今では北欧スカンジナビアの北極圏に通うようになりました。
さらなる旅先を探して、アイスランドはこの春で2度目。
ノルウェーやスウェーデンよりもワイルドで無垢な自然が残されており、ところどころ温泉が湧き、惑星という表現がマッチするような場所です。
旅先としては申し分なし。
さらに首都レイキャビクからのロードトリップで国中回れる規模感(北海道の120%サイズ程度)で雪を追いかけるのが比較的簡単。
旅にはサーフボードを持参することが多い私にとって、海に向かって滑り、アフターはサーフィンを楽しむ、なんて夢の旅が叶う場所です。

・4月の旅 カナダ

大学生時代にスキー修行がしたくて、思い切って休学し単身カナダへ。
滑り込んだ山がウィスラーでした。
当時雑誌やDVDで紹介されていた世界最先端のパークシーンはほぼウィスラーで撮影されたものであり、そのシーンを食い入るように眺めていた青年TKは、借金までして単身海を渡り夢を叶えます。
レストランでアルバイトをしながら毎朝ワクワクしてゴンドラに飛び乗り、トップライダーと仲良くなり、貧しいながらも夢のような生活を送りました。
そしてウィスラーからヒッチハイクで大陸横断したり、夜行バスを2泊乗り継いで北極圏を訪ねたり様々な場所へ旅した、まさに青春の思い出。
そんなスキーと旅における分岐点であるウィスラーに、野沢温泉コンパスハウス主催のツアーのアテンドとして戻ることができました。
時代が変わろうとも、そして僻地を経験した後でも、このウィスラーという進化を止めないリゾートにはワクワクします。
広大なフィールドと滑走エリア、高速リフトでアクセスする氷河、世界トップクラスのパークに麓の街と、そこはまるで宝箱。

ARMADA SKIと旅に出る

野沢温泉

Locator112 / 187cm / Tracer Tec Tour Bin
野沢温泉ではゴンドラアクセスでラクラクBCが多いですが、深く長い沢を登ることがあります。
また天候のいい日は、近隣の村に向かって滑るというロングツアーも楽しめます。
そんなことから、頻繁に降るパウダーでの滑走性能と浮力を最大限に享受できつつ、ハイクの性能に優れるLocator112、しかも一番長い187cmを多用します。
112mm×187cmは海外の大斜面のイメージが強いですが、私は緩斜面の深雪コンディションこそ推奨します。
ツインチップよりもセットバックされており、緩斜面での伸びが違います。
ぜひお試しあれ。

北海道

WhiteWalker / 185cm / Tracer Tec Tour Bin
北海道は大きな山を詰めるよりも、良い斜面をショートハイクで繋いで滑ることが多いので、軽量感よりも滑走性能を優先させてWhiteWalkerを選んでいます。
とはいえたったの1800g(185cm)と、スキーの中では超軽量の部類です。
パウダーBCスキーの代名詞と言えるZERO ARV JJ ULとの差は、実はたったの100g。
WhiteWalkerは他の多くのファットスキーと違い、ロッカーが浅く、浮力は強くありませんが、その分抵抗が少なくスピードに乗りやすいのが特徴。
長い有効エッジを活かしたエッジの切れ味と、しっかり入ったキャンバーにより、マニュアルでエッジを操作できる感覚がたまりません。
そして浮力よりもパウダーに沈める感覚が味わえ、まるでサーフィンのように山をクルーズできます。
WhiteWalkerといえばShift13のイメージが強いですが、Tracer Tec Tour Binも試してみてください。

アイスランド

Locator96 / 178cm / Tracer Tec Tour Bin
海外のBCトリップといえばほぼ一択。
海外では日本ほどの降雪が望めないため、浮力よりも機動力と携帯性が重要となります。
そこで脅威の超軽量1350g(片足)と優れたハイク性能を誇るLocator96は最大の武器。
しかも重量は超軽量ながら、他ブランドの山岳スキーとは違い、そこはARMADA MADE。
リバウンドがしっかりあって滑り応えを犠牲にしていません。
アイスランドやノルウェーなどごく一部の国では、頻繁に降雪がありパウダーのチャンスもありますが、Locator96は、滑走性能にも優れ、突然のパウダーでも問題なく、あらゆる雪質や斜面で万能に機能してくれます。
ロングハイクや初見の複雑な地形のハイクがあるスキーでも、ラクラクです。
そのうえこの軽さは、フライトの重量制限を気にせずパッキングできるメリットもあります。

BCで使用するスキーにはN TRACER TOURをセットしております。
軽量で、モードチェンジが容易で、トラブルレス。
ARMADA専用設計でオリジナルより延長されたヒールベースプレートと、トゥのピンビンディングらしからぬ保持力で、ライディング性能も高い点が特徴です。
不安を感じさせません。

カナダ・ウィスラー

ZERO ARV 106 Ti / 180cm / Strive14GW
ウィスラーではゲレンデクルーズでハイクなし。
パークから急斜面のボウルまで1本で遊べるスキーを選びました。
パークスキーのツインチップと違い、このスキーはチタニウム入りで大人がカービングしても楽しめるスキー。
滑りメインでたまにパークを流すスタイルにうってつけです。
大人の心をくすぐるシンプルなデザインもオススメです。

・旅の持ち物

旅を充実させる上で、持ち物はその旅の命運を左右します。
以下に私のこだわりをこっそりお伝えします。

・軽量
・マルチユース
・高品質

とにかくミニマムな装備での行動を目指しています。
そうすることでフットワークが軽くなり、常に僻地を目指さねばならない私たちスキーヤーにとってストレスが激減します。
そして旅先にて簡単に壊れては困るので、信頼できる高品質のものしか持ち歩きません。
例えば、バックカントリー用のバックパックをフライトの機内持ち込みに応用する。
バックカントリー用の高品質インナーをフライトから就寝時まで応用する。
軽量でマルチで高品質であることは必須です。
その先にあるのがARMADA SKIで、今回紹介したスキー達は、どれもこのこだわりに該当する、信用に足る装備です。

特にTracer Tec Tour Binは、片足390gと異次元の軽さながら、カチカチのアイスバーンでのカービングでなければ問題なし。
むしろ軽快な足捌きを助けてくれます。
またシンプルな構造は、同時に堅牢さにつながります。
パウダースキーにこんな小さなビンディング?とよく聞かれますが、足元が柔らかいパウダーはブーツとのコンタクトにシビアさを求めないため、むしろこのビンディングが活きるはずです。
ぜひ一度お試しください。

・私たちARMADAスキーヤーにできること

時に声ひとつで人の心を動かすプロがいます。
あるいは料理で人を笑顔にするプロがいます。
私には琴線に触れる美しい歌声はないですし、料理で人を唸らせる才能もありません。
でも、スキーと旅だけは長くも短い人生でずっと好きなこととして向かい合い、努力し、多くの方の支えをいただきながら地道にここまで続けてこれました。
その熱量だけはプロのシンガーやシェフに負けず劣らず。
では、こうして生きてきた私たちスキーヤーには、シンガーのように人を勇気づけたり励ましたりできることができるのか、常に考えています。

私たちスキーヤーにできること。

私たちスキーヤーにしかご提供できない価値観が、きっとあるはずです。

ARMADA SKIと出かけるスキートリップで、誰かを喜ばせ、魂を震わせ、生きる糧を提供することができたなら。

そんなに幸せなことはありません。

心のコンパスが目的地を探し始めたなら、ぜひ ARMADA SKIと共に雪山を旅しましょう。

Photo by Kohei Matsumoto , Yoco Sato


著者:河口 TKY 尭矢 (かわぐち たかや) 
愛称はTK。ARMADA Japan Test Centerを運営する、野沢温泉村 ㈱ドリームシップ 代表取締役を務める。冬は野沢温泉を中心にBCガイド、夏はサーフィン&トラベルガイドとして、通年、ゲストに対して最高の非日常体験を提供する。通訳、旅行、BCガイドに関する資格を有しており、世界中のゲストを安全に、フィールドへ導く。なにより、彼自身がスキー・サーフィン・旅の熱烈なファン。


・ProSkier
・ProTraveler
・MountainGuide
・TravelSurfer 50countries
・50ヶ国世界一周

全国通訳案内士
総合旅行業務管理者
JMGA認定BCスキーガイド

次回予告

次回配信からは何度かに分けて、ライダーより情報発信してもらいます。第一弾は、北海道をベースに活動する中山 椎菜より記事が届きました。ジュニア時代から基礎スキーを初め、全日本技術選出場経験を持つの彼女のスキー観や現在の活動と共に使用用具について、リアルをお伝えいたします。次回配信もお楽しみに!


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